品川心療内科┃院長紹介
今 忠(こん ただし)
昭和60年東大医学部卒、大学院を経て、東大病院などに勤務、2010年品川心療内科開院
精神保健指定医
心がけていること「科学と思いやりと倫理」
開業メンタルとして、軽度から重度までさまざまな状態について勉強してきました。カウンセリングを重視し、薬剤はなるべく少なく、漢方薬を組み合わせることも工夫しています。
専門領域は大学院時代には脳解剖学、脳機能生理学でした。その継続として精神病理学と精神療法、精神薬理学を、さらに漢方薬を勉強しました。
おおむねの治療法は、現在各国にいろいろあるガイドラインに従う標準的治療です。まだ学会として評価の確定していない、また、副作用の研究の蓄積のない分野には慎重です。アメリカの先進的治療についてはその有用性や商業性の実態を見極めたのちに採用しています。ヒポクラテス的態度と考えています。少なくとも、患者さんに害をなすなが重要です。
うつ病の一部と統合失調症の一部については、自分のうつ病理論と統合失調症理論も頭に置きながら、研究的な経過観察を大切にしています。
【患者さん用解説文】
【一般または専門家向けのブログ】
いくつか感想など
・ 『うつ病治療ハンドブック-診療のコツ』 共著 大野裕編 「統合失調症とうつ」今忠・原田誠一 2011 金剛出版
この本は各分野のトップの研究者が執筆しているもので、その中に、私などが、統合失調症とうつ病という、多面的な問題、あるいは幾層にも重なり合う問題について書かせていただきまして、光栄なことでした。ほぼ2000年来の問題であり、あるいは短く言っても、クレペリンのころからで、100年は経過している問題です。何か一文を書こうにも、参考文献はたくさん出てきて、もちろん日本語ではないし、その点でまず記述を限定せざるを得ませんでした。
つまり方針として、医学の歴史ではなく、自分の新しい考えだけを書かせてもらおうと決めました。書き始めると、自分の言いたいことだけでも、相当に長くなってしまうことが分かりました。想定される反論への反論などもカットして、かなりそっけなくなりました。ところがそうなると、検討が足りないのではないか、関係論文にあたって検証しているのかなどの問題が生じました。
しかしそもそも統合失調症とうつ病という話は範囲が大きすぎて、いずれかのやり方で省略させてもらうしかないと結論しました。しかしそれでも、あれこれ詰め込んだので、ぶつ切れになり、結論だけ提示する部分もあり、なかなか説得力のある流れにはなりませんでした。
当時の私の関心からすれば、統合失調症とうつ病の関係を考えるとしても、まず、統合失調症の本質が何であるかを考えなければ、意味がないだろうと思いました。そしてうつ病についても何が本質か、実証できないまでも仮説を提示しなければ、統合失調症とうつ病の関係と言っても、雲をつかむような話になると考えました。
私のうつ病論の一端はすでに書いていましたので、今回は統合失調症論の中心部分を書かせてもらおうと決めました。しかしそれでも、説得力に欠ける不十分なもので、自分のプレゼンテーション能力の不足を今回も大いに感じました。
言いたいことあるのに、届いていないなあという感じです。簡単に言えば、自我障害の中の能動性・被動性の問題を、神経回路レベルのメカニズムとして説明し、そこから、いろいろな問題を考察しようとするものでしたが、もちろん、それでも問題は大きすぎました。
共著者の原田先生の取り計らいで、何とかまとまりはついたように思いますが、自我の能動性は幻想であり、自由意志も幻想であり、自我の能動性の幻想が破れるときにさせられ体験や幻聴や被害妄想が生じるといったメインの話題については、説得力不足としてカットとなりました。いまではそれでよかったと思いますが、幻聴は自我の能動性という「幻想」が破れて現実がむき出しになった状態、つまり、させられ体験や幻聴や被害妄想は、自我の能動性という「本当の妄想」が破れた時に生じる「仮の妄想」なのであって、むしろ現実そのものに近いと考えられる部分もあるのだと考えているわけです。
そんなことを基盤として、統合失調症とうつ病の関係になりますが、いろいろな関係の仕方があり、それぞれについてメカニズムを提案できるわけですが、「診療のコツ」なのですから、それもなじまないということでしょう。自分の考え・仮説を理解してもらうことはかなり難しいのだと実感しました。
問題はたくさんあって未解決なのに、書けたことは少ししかない。そんな論文でした。
・ 『こころの科学』 ネット社会とこころの悩みとDAM理論 今 忠 2009 日本評論社
上記論文では、「うつ病発生のメカニズムと、病前性格と、治療論を整合的に説明できる私なりの理論」を紹介しています。残念ながら実証実験をするなどという段階のものではありません。ここを基盤としてその後の進展は「下書き うつ病勉強会」にいろいろと書きました。下書きをまとめる日が来ればよいと思いますが、どうでしょうか。
・その他出版としては、大学院生時代に科学哲学の本(丸善)を出版、いまは絶版。「ご冗談でしょう、ファインマンさん」の出版と同時期で、東大の生協書店で隣同士に平置きされていました。私が自分の人生の中で科学研究をどのように位置づけるか考えていた時の本です。
・精神医学用語解説である「こころの辞典」(丸善)がありますが、これもいまは絶版です。これは恩師山内東大名誉教授と丸善が、やりませんかと私に提案してくださり、やってみますと言って始めた小さな辞書です。学問的最先端の辞書ではなく、初学者が使って役立つような確実な知識を提示する辞書を目指しました。精神科入局一年程度、臨床心理士受験生程度の読者を想定しました。当時のクリニックで、山内名誉教授と私、そして臨床心理士数名とで一年以上にわたり毎日昼に勉強会を開き、昔からの精神医学の有名な論文を一日ひとつ検討していきました。笠原先生とか中井先生、神田橋先生、生活臨床などが多かったのですが、そのほかにも、たくさんよい論文の蓄積があることを勉強しました。臨床心理士さんの参加者が多かったので、解剖学、生理学、薬理学的なことよりは、臨床的観察、診断、治療、精神療法などの比重が高かったと思います。それまで自分が読んだ論文や本の中で、一緒に勉強したら役立つだろうと考えられたものを選んで、内容について、また実際の症例について話し合いました。いまでもそのころ使った400くらいの論文コピーが手元にあります。それも私の治療の基礎になっています。
・その成果をまとめたのが「こころの辞典」です。たとえば、「思考吹入」のような項目ならばある程度書きやすいのですが、「統合失調症」のような大きすぎる項目は、長く書いても、学問的に評価が確定していることばかりではなく困難で、短く書こうとしても、何がコアの問題なのか、そのことがそもそも確定していないのでさらに困難で、結局こうした大きな用語についてはあきらめました。なにかもっと大きな本を読んで全体像を把握してもらうしかないと思いました。
・出版の時にいつも思うのは、表紙のデザインの問題です。編集者さんは、「丸善だから依頼できた超一流のデザイナーです、今度も評判はいいですよ」と言うのですが、すこしもやもやしながら、それでも相手は大出版社ですから「そうですね」と言っていました。
・この本はその後は用語の変遷に従い、たとえば精神分裂病を統合失調症に訂正したりなど手直しをしました。売れない本なのに改定してくれたのはさすが丸善でした。また、「24冊の専門辞書が載っている電子辞書」などがありますが、コンパクトでちょうどよかったのでしょう、採用されていました。
・この品川心療内科公式サイトにも「こころの辞典」の原稿のようなものを載せましたが、これは一番古いもので、用語もシゾフレニーは「精神分裂病」となっています。比較的新しいものを載せても、自分としては、今の自分が考えるとそれで納得できる内容ではないし、昔はこうだったという歴史的な意味のほうが大切と思いました。しかしまあ、どれもそんなに大きく古くはなっていないと思います。
品川心療内科┃カウンセラー
ベテランから若手まで、男女、全部で30名くらいの在籍です。全員が大学院修士卒業の臨床心理士です。外部にスーパーバイザーを持ち、指導もしていただく、院内でも活発に勉強する、という方針です。
思いや不安を受け止め、問題を整理し、あなたが自分自身について理解するお手伝いをしています。
各カウンセラーにより、またケースにより、認知行動療法、精神分析療法、ロジャース的療法、自律訓練法、マインドフルネス、各種呼吸法、不安対処法、アンガーコントロールなどの心理療法を実施します。
(その他、アンガー・マネージメント、アサーション、動機付け面接、精神分析各学派、家族療法、カップル療法、ペアレンタルトレーニング、ゲシュタルト療法、実存的心理療法、認知療法、行動療法、REBT、クライアント中心療法、分析心理療法、自己心理学、対人関係療法、アドラーの精神療法、森田療法、内観療法)さらに各種心理検査(知能、性格、認知、などの各領域、小児、児童用の各種心理検査、メンサ提出の書類、猟銃所持に際しての診断書)
品川心療内科┃院内勉強会資料
医師とカウンセラーが院内で勉強会を続けています。院内勉強会の成果をまた本として出版出来たらいいなと思います。
一例としてうつ病勉強会の資料と精神療法の勉強を紹介します。