うつ病は本人の性格や考え方、職場や家庭環境のストレスなど、様々な要因によって発症するといわれています。発症の原因やメカニズムについては現在もはっきりとはわかっていませんが、感情や意欲を司る脳の働きに不調が生じているものと考えられます。
うつ病の原因になり得るものとして、例えば親しい人との死別、受験や仕事での失敗、失恋や離婚などの辛い経験がきっかけとして挙げられます。しかし、結婚や進学、昇進などの喜ばしい出来事でも環境の変化によりストレスが生じ、うつ病を引き起こすことが知られています。その他、生まれ持った遺伝的な要素や身体の病気、薬の副作用などが発症の原因となる場合もあります。
うつ病の症状は、心と身体の両方に現れます。
気分の落ち込みや不安、イライラなどの精神症状の他、食欲の低下やだるさ、痛みなどの身体症状が見られる場合もあります。
悲しい出来事による気分の落ち込みは、正常な心の反応です。
しかし、うつ病の場合は特に明らかな原因がないのに、気分の落ち込みや意欲の低下などの抑うつ症状が長期的に継続します。
下記の項目で当てはまるものが多く、2週間以上ほぼ毎日続いていたり、日常生活に支障があったりする場合はうつ病の影響かもしれません。
本人が感じる変化だけでなく、周囲から見てわかる変化もあります。
うつ病の精神症状
- 気分が落ち込む
- 意欲・行動力の低下
- 不安・焦り・イライラする
- 集中できない
- 仕事でミスが増える
- 何をしても楽しめない
- 口数が少なくなる
- 自分に価値がないと感じる
- 飲酒量が増える
うつ病の身体症状
- 食欲の低下
- 寝つきが悪い、眠れない
- 疲れやすい
- 頭痛
- 吐き気
- めまい
- 動悸
- 肩こり
- 腹痛
- 耳鳴り
- 胃の不快感
- 下痢・便秘
- 生理不順
- 性欲減退
うつ病の発症は、もともとの性格の特性も関係があるといわれています。
うつ病になりやすい気質としては下記のようなものが挙げられます。
頑固・生真面目
責任感が強い
几帳面・完璧主義
自分に厳しい
他人に気を遣う
周囲からの評価が気になる
真面目で責任感が強いことはむしろ長所です。
その一方で自分の許容範囲を超えて頑張りすぎてしまいます。
ストレスを溜め込んで心のバランスを崩しやすい傾向があります。
しかし、性格とうつ病が直接関係するわけではありません。
うつ病の治療には、休養・環境調整と薬物療法、精神療法などがあります。
心と身体をしっかり休ませることが治療の第一歩となります。
家族や職場の同僚、上司など周囲の方にも協力してもらい、焦らずに休養を取れる環境を作ることが大切です。
また、規則正しい睡眠やバランスの取れた食事も、心と身体の健康を取り戻すためには欠かせないものです。
うつ病の原因となったストレスや環境、生活習慣を見直しましょう。
薬物治療では、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬を使用します。
最近の抗うつ薬は、大変改良が進んでいて、副作用や依存性は少なくなっています。また症状に合わせて抗不安薬や睡眠薬など、薬を組み合わせて、全体の薬を少なくすることができます。
抗うつ薬はすぐに効果が現れるわけではなく、2週間から4週間待つことが必要です。焦らずに服用を続けましょう。
うつ病を引き起こす原因となったストレスや考え方を振り返って対処法を学び、再発を防止するためには、カウンセリングなどの精神療法が有効です。物事の考え方や感じ方のクセを見直す「認知行動療法」で治療しましょう。
不安に対処する場合、マインドフルネスや自律訓練法が有効です。
この他にも症状に合わせて、様々な治療法を組み合わせます。